静脈血栓塞栓症、深部静脈血栓症、肺塞栓

深い場所の静脈に血栓ができると深部静脈血栓症(DVT)といわれ、肺塞栓(PE)のほとんどはDVTが原因となります。DVTとPEを含めて、静脈血栓塞栓症(VTE)といいます。

遠位部(末端のほうの細い静脈)血栓は自然溶解するためほとんど問題になりませんが、近位部(太い静脈)血栓は治療対象になります。

VTEといえば拘束が必要なケースを連想しますが、拘束されていなくても、昏迷、精神運動制止、過鎮静(大量服薬を含む)、臥床傾向などでも起こりえますね。拘束とは無関係に、精神疾患そのものがVTEのリスクだともいわれています。

そうですね。ですからまず疑うことが大事になってきます。

診断ですが、PEであれば心電図の「S1Q3T3パターン」が有名ですが精神科での判断は難しいかもしれません。PEを疑った場合はWell’sクライテリアを参考にしながら造影CTを行いましょう。

D-dimerは感度が高く特異度が低い検査ですから、低ければVTEを否定できるものの、高くてもVTEと断言できず、脳出血など抗凝固薬が禁忌の疾患でも高くなることがあるため注意が必要ですね。

DVTについては下肢エコーがよいでしょう。

チョっとくわしく

治療についてみていきましょう。従来のVTE治療は、ヘパリン注射やワーファリンが主流でありましたが、現在は中等症以下であれば急性期からDOAC内服でも可能になってきています。

予防も非常に重要です。弾性ストッキングは有効性が乏しいといわれています。ヘパリンまたは間欠的空気圧迫法で予防するのがよいでしょう。上述の通り、拘束されていなくても、昏迷、精神運動制止、過鎮静(大量服薬を含む)、臥床傾向などにおいてもVTE予防を常に念頭に置いておきましょう。

参考文献
1 精神科臨床における静脈血栓塞栓症. 石田琢人 臨床精神医学 54(4): 335-342, 2025.



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