ADHDのお薬を整理

ADHDのお薬は脳の報酬系を刺激する中枢神経刺激薬と、それを刺激しない非中枢神経刺激薬にわけられます。

ADHDの病態にはドーパミンとノルエピネフリンが大きくかかわるといわれています。

治療ストラテジーとしては、薬物療法よりも心理社会的介入(療育、環境調査等)が優先されることは忘れないようにしましょう。

チョっとくわしく
ADHDはドパミンとノルアドレナリンの調整障害であるといえます。前頭前皮質でノルアドレナリンの調整障害が起こると、プランニング、ワーキングメモリー、注意、衝動制御が損なわれます。興味関心がある場合にはADHD患者様の前頭葉のノルアドレナリンが高まり過集中し、ない場合にはノルアドレナリンが低下して注意集中が足りなくなります。
しかしノルアドレナリンが多ければよい訳でもありません。α2Aアドレナリン受容体がうまく刺激されれば前頭前皮質の機能は改善されます。しかしノルアドレナリンが多すぎるとα1アドレナリン受容体に作用してしまい、この場合は前頭前皮質の機能は逆に低下してしまいます。

コンサータにより側坐核(線条体の一部)のドーパミンが増えて報酬系の機能が改善します。報酬系とは、満足感、達成感をつかさどる神経系であり、これが障害されていると充足感が常に不十分ですから「待てない、注意を他の物にそらし気を紛らわせる」ことができなくなり、これにより多動や不注意が現れると考えられています。
側坐核に作用するため、依存や乱用のリスクがあります。
ほかの副作用として食欲不振、不眠があり、特に子どもの場合成長を阻害する可能性があるため、休薬日をもうけるなどして対応します。


人では前頭葉背外側がワーキングメモリーを担います。つまり前頭葉背外側において大脳辺縁系より少し長いスパンの時間におけるシュミレーションができます。さらに前頭極がメタ認知や自己意識を担い、そこでは自身を俯瞰的にみながら将来のことを複雑にシュミレーションできます。よってコンサータは前頭前皮質におけるドーパミンとノルエピネフリンの濃度をあげることで、実行機能が改善することが期待できます。実行機能とは目標のための計画を立て、目標を達成するために自分の行動や思考、気持ちを調整する脳機能です。
コンサータは服用後12時間は作用が持続します。

コンサータの処方には、医師と患者が特定のシステムに登録することが必要です。このシステムにより、コンサータの適正使用が管理されます。
医師が登録医として認められるためには、数年ごとに登録を更新する必要があります。登録医は、この更新手続きを忘れないように注意しましょう。
かつてうつ病にメチルフェニデートが使われていたこともありましたが、うつ病とADHDの併存例におけるうつ症状へのメチルフェニデートの効果は乏しいとされています。また不安症とADHDの併存例で、中枢神経刺激薬は不安を増悪させる可能性があり、非中枢神経刺激薬を使用した方がよいかもしれません。

ビバンセとはアンフェタミンのプロドラッグです。プロドラッグとは疾患部位に到達してから活性型に変化する薬です。内服して徐々にアンフェタミンに変換され、内服後3-5時間で最大血中濃度になります。
作用はコンサータと似ており、前頭前皮質でドパミン、ノルアドレナリンの濃度を上げ、側坐核でドパミンの濃度をあげます。

ストラテラの作用機序ですが、ノルエピネフリントランスポーター(NET)へ親和性が強く、ドパミントランスポーター(DAT)にはほぼ作用しません。DATは側坐核に少ないため報酬系には作用しませんが(依存や乱用のリスクが低い)、前頭前皮質ではNETがノルアドレナリンとドーパミンを調整しているため、両者に作用して実行機能が改善される。
ストラテラには液剤もあり、子どもへの投与の際など便利でしょう。

インチュニブは前頭前皮質のα2アドレナリン受容体刺激をすることで、ノルアドレナリンの神経伝達調整をします。α2アドレナリン受容体刺激による鎮静は、PTSDの過覚醒症状(、「不眠症」「イライラ」「ちょっとしたことに極端に反応する」「警戒心が強くなる」などといった状態が続いてしまうことがあります。 )にも有用であるという報告があります。不眠があるADHDにも利用されることがありますが、使用して6週目には鎮静系の副作用がなくなったという報告もあります。もともと降圧剤として使用されていたため、血圧低下や徐脈には注意を要します。米国ではクロニジン(カタプレス)というα2受容体アゴニストである高血圧の薬がADHDにも適応が通っています。こちらも鎮静作用が強く、ADHDの不眠によく利用されるようです。

ADHDとチック症は併存しやすいとされていますが、本邦ではコンサータはチック症、トゥレット症候群に禁忌となっています。チック症状にはアリピプラゾールなど抗精神病薬による治療をし、その後にADHDの治療を考えるとよいかもしれません。またコンサータはてんかんについて禁忌ではないのですが、慎重投与となっています。コンサータの添付文書には、「てんかん又はその既往歴のある患者。痙攣閾値を低下させ、発作を誘発させるおそれがある」という記載があります。

ADHDには反抗挑発症や素行症を併存することもよくあります。反抗挑発症と素行症を簡単に説明すると、反抗挑発症は暴力や窃盗などはせず、良心もあるものの、権威へ逆らうことがみられます。素行症の方がやや対応が難しいかもしれません。なぜなら、良心に欠けていて、実際に噓をついたり、窃盗などの問題行動を起こしてしまうからです。

ADHDに投与した中枢神経刺激薬により不眠が出現した場合、どうすればよいでしょうか。
1,まず1-2ヶ月で軽快する可能性があるため経過をみる。
2,非中枢神経刺激薬(ストラテラ、インチュニブ)に変更。海外ではクロニジンも選択肢となります。日本では高血圧の薬ですが、選択的アドレナリンα2受容体作動薬であり、インチュニブとプロファイルが似ていますね。
*中枢のアドレナリンα2受容体を刺激すると末梢における交感神経の活動が抑制される。
3,抗ヒ剤、トラゾドン、ミルタザピンなどをためす。


参考文献
1 ADHD 治療薬が睡眠に及ぼす影響 著者: 河邉憲太郎, 堀内史枝 出典: 臨床精神薬理 Volume 25, Issue 10, 1105 – 1111 (2022) 出版社: 星和書店
2 https://www.hosp.u-fukui.ac.jp/specialty/8004/
3 併存疾患を有する成人期ADHDへのアプローチ
4 注意欠如・多動症(ADHD)の薬物療法、著者: 浦谷光裕, 飯田順三、出典: 臨床精神薬理 Volume 25, Issue 6, 685 – 692 (2022)
5 思春期における睡眠の問題および睡眠障害:見立てと治療、著者: 堀内史枝、出典: 臨床精神薬理 Volume 25, Issue 3, 305 – 313 (2022)、出版社: 星和書店



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